2015年9月9日水曜日

《賛同依頼》同志社香里中学校への育鵬社教科書採択に関する抗議申し入れ

ーーーーーーーーーーー
以下、転送・拡散用
ーーーーーーーーーーー
日本基督教団いずみ教会の安田和人です。
ML等で重複しておりましたらお許し下さい。

大阪府寝屋川市にある同志社香里中学が、2016年度から使う社会科の教科書として育鵬社の歴史・公民教科書を採択しました。全国でも私立中学では4校目(うち3校が大阪府内私立中学)となり、キリスト教主義学校では初となります。

このことに対し同校聖書科教諭(日本基督教団教師)は校長とも話し合いを続けておりますが、校長は「文科省が認可した教科書だから」という理由で撤回する意向はないようです。
育鵬社の教科書採択に疑問を呈している聖書科教諭を孤立させず、少なからぬ教会関係者がこのことに遺憾の意を表し、抗議の声を届けていくことが必要と感じ、抗議・申し入れ書を書き ました。
大変、長文になってしまい申し訳ありません。

当初はいずみ教会役員会として決議し送付するつもりで書いたのですが、靖国・天皇制問題情報センターで検討し、これに賛同を募ろうということになりました。
個人、団体いずれでも結構です。ぜひ賛同下さる方は私、安田和人までご連絡下さい。

yasuda@kazu.nifty.jp



個人の場合は、名前と、できれば肩書きを入れてくださると助かります。文章の内容から教会関係者であるとわかった方がいいように思います。

9月7日には第一次として送付をいたしました。その後も、同校聖書科教諭の闘いが続く限り、こちらもしつこくやるつもりです。(9月8日17時現在 個人賛同146名 団体賛同16団体)

よろしくお願いいたします。

もちろん、各個人、各教会からの抗議も送ってください。
福田耕治校長宛のものは2枚のコピーを取り、写)社会科主任殿、写)聖書科主任殿それぞれに宛てていただければありがたいとのことです。「そして、聖書科も含めて、叱りつけ、キリスト教会に説明責任を果たすよう求める文面でお願いします。」との聖書科主任のコメントです。
――――――――――――
抗議先
〒572-8585 大阪府寝屋川市三井南町15-1
同志社香里中学校校長 福田耕治
TEL 072-831-0285 FAX 072-834-3750

〒602-8580 京都市上京区今出川通烏丸駅東入玄武町601
学校法人同志社 総長 大谷實殿

同じく
学校法人同志社 理事長 水谷誠殿
―――――――――――――
ここから抗議申し入れ本文です。

------------------------
育鵬社発行の教科書採択に対しての抗議並びに申し入れ書

学校法人同志社 総長 大谷實殿
学校法人同志社 理事長 水谷誠殿
同志社香里中学校校長 福田耕治殿

 貴校が日頃よりキリスト教主義に基づいた教育を実践しておられますことに敬意を表します。
 さて、9月3日付の報道に寄りますと、貴校は「2016年度以降に使用する歴史と公民の教科書として、それぞれ育鵬社発行の教科書を採択した」とのことです。キリスト教主義の中学校としては初の採択であることも報道されています。
 報道による指摘の通り、育鵬社発行の中学歴史並びに中学公民教科書(以下、「育鵬社教科書」)は、その歴史観、日本国憲法の捉え方等に大きな問題を孕んでいると言わざるを得ません。
 育鵬社教科書は、自由社発行の教科書と共に、実質的に扶桑社発行の教科書の後継にあたります。2001年、「新しい歴史教科書をつくる会」(以下、「つくる会」)は『新しい歴史教科書』『新しい公民教科書』を発行し、扶桑社より出版しました。その後、「つくる会」は内部対立により二派に分裂し、版元の扶桑社が「つくる会」と絶縁したため、2010年度からは、版元を自由社に移して「つくる会」教科書を刊行しています。一方、「つくる会」から分裂したグループは「日本教育再生機構」や「教科書改善の会」を結成し、扶桑社の完全子会社として設立された育鵬社から教科書を発行するに至っています。
 育鵬社教科書が採択された大阪市に関して言えば、大阪市教育委員である高尾元久氏は、1972年に産経新聞社に入社以来、産経新聞大阪本社委託業務アドバイザーに至るまで、育鵬社と同じフジサンケイグループの職責を歴任しており、育鵬社教科書の共同事業者である日本教育再生機構の機関誌『教育』に少なくとも4回、投稿・インタビュー記事を掲載していることから、高尾委員は育鵬社との利害関係にあることが指摘されてきました。結果として、大阪市においては育鵬社教科書が採択されております。
 大阪市では、首長の権限を拡大させる地方教育行政法の改正が推し進められる中、その先取りとして市長が教育委員会に介入をしてきました。橋下市長の教育委員会制度批判は、ツイッターの発言にも多く見られるところです。
 行政による教育への政治介入は大阪市に限ったことではなく、安倍晋三首相は過去において「新しい教育基本法の趣旨に最もかなった教科書は育鵬社の教科書であると確信しております。(中略)関係者の皆様の大変なご尽力はもちろん、とくに採択された教育委員や私立中学の皆さんには、連日の不当な妨害や反対運動に決して屈することなく、自らの見識と勇気をもって、地域と日本の子供の将来のために育鵬社の教科書を採択されました。本日ご列席の皆様とともに、ここにあらためて敬意を表したいと思います。(中略)わが自由民主党もこの度の教科書採択が適正かつ公正に行われるよう尽力して参りました。」(2011年9月21日「教科書改善の会」主催シンポジウムにて)と発言し、露骨に教科書採択への介入姿勢を表しています。
 このような状況の中で、果たして教科書採択が「公正」の名の下に行われていると言えるでしょうか。改正教育基本法には大きな問題があるとは言え、それでも「教育は、不当な支配に服することなく」(第十六条 )行われるべきものと規定されています。育鵬社教科書が辿ってきた道程は、教育の「自由」の一線を越えてきたと言わざるを得ません。
 同志社香里中学校での教科書採択に何らかの介入があったなどと、そこまで勘ぐるつもりは毛頭ありませんが、育鵬社教科書が、とりわけ大阪市においては大きく問題として取り上げられてきたことを、貴校校長、社会科主任教諭が知らなかったはずはありません。「自治自立の精神」「自由主義」を掲げる貴校が、何故、育鵬社教科書採択という愚行を犯したのか、大きな疑問を抱くところです。
 育鵬社教科書には、その内容にも大きな問題があることは、すでに様々な指摘があるとおりです。
 先に述べた安倍首相発言との関わりで言うならば、8月14日に発表された内閣総理大臣談話(いわゆる「戦後70年談話」)では「アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」と語っています。育鵬社教科書は、日露戦争に関する記述において「同じ有色民族が,世界最大の陸軍国・ロシアを打ち破ったという事実は,列強の圧迫や植民地支配の苦しみにあえいでいたアジア・アフリカの民族に独立への希望をあたえました」と記し、それを証しするために孫文の言葉等を引いています。多くの教科書では、日露戦争のその後の評価として「しかし、日本は新たな帝国主義国としてアジアの民族に接することになりました」(東京書籍)、「アジア諸国の期待とは異なり、 日本は韓国の植民地化を進め、陸軍・海軍の軍備を増強させるなど、帝国主義国としての動きを活発にしていきました」(帝国書院)、「しかし、その後の日本のアジアでのふるまいは、その期待を裏切るものとなった」(清水書院)と記述することで、日本の植民地政策に対するアジア民衆からの批判的視点をも書き記しています。一方的見方だけでなく、歴史を様々な角度から見る姿勢こそ、貴校校長が示している「自分で考えて判断し、信念をもって前進していく人。また、人の痛みを知り、自らの力を世の中のために役立てる人」の育成に資するのではないでしょうか。
 なお、育鵬社教科書が引き合いとして出している孫文の言葉「(前略)日本がロシアに勝った結果、アジア民族が独立に対する大いなる希望をいだくにいたったのです」には、その後があり、「今後日本が世界文化の前途に対し、西洋覇道の鷹犬となるか、或は東洋王道の干城となるか、それは日本国民の詳密な考慮と慎重な採択にかかるものであります」(「大アジア主義」1924年12月28日神戸高等女学校において神戸商業会議所外5団体におこなった講演『孫文選集』より)と、日本の覇権主義に対する警鐘を鳴らしています。孫文の言葉の一部分だけを切り取り、その本意を伝えようとしない記述方法は、日露戦争を含め、日本が起こした戦争を肯定化するミスリードといえるのではないでしょうか。
 安倍首相の「戦後70年談話」は、その文章の主語を曖昧にすることで侵略戦争に対する責任性をも不明瞭にし、「繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました」「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と、「反省」「謝罪」という言葉を用いながらも、それらを過去のものに追いやっています。現在、安保関連法案を強行採決しようとしている安倍首相の歴史観と育鵬社教科書の歴史観は、軌を一にしており、これらの歴史観は、過去の事実と真摯に向き合う態度から遠ざけ、ひいては国際社会からの孤立化を招いてしまうのではないでしょうか。そのような姿勢は、校祖・新島襄から受けつがれてきた「国際主義」を掲げる貴校にふさわしいのでしょうか。
 問題は歴史教科書だけではありません。むしろ公民教科書の方にこそ重大な問題があるとも言えます。
 今治市教育委員会『中学校教科書調査報告書』「教科用図書調査研究資料」には、公民教科書の評価の一つとして「憲法改正や安全保障の記述に多くのページを割いていることを含め、教科書をつくる側の意見の押しつけや将来の世論を誘導しようとする意図を感じる/思想に偏りを感じる/自衛隊関係の資料が多すぎる/内容・写真に偏りがある/原発の有用性を強調し過ぎ、その危険性や反対意見があることには言及していないなど、公平性、客観性に欠ける箇所がある/皇室や天皇陛下の写真などを多く取り上げて、愛国心と関連づけようとしている箇所が多く、違和感を感じる」とあります。
 また公民教科書では「男女の平等と家族の価値」という特集を組み、「男女共同参画社会の課題」として「個性尊重が強調される中、男女のちがいというものを否定的にとらえるのではなく、男らしさ・女らしさを大切にしながらそれぞれの個性をみがき、高めていくことが重要です」と「男らしさ/女らしさ」を強調する内容になっています。これらの記述は、ジェンダー意識を固定化するものであり、「性」の多様性が認識されつつある今日においては、明らかに人権感覚を欠いたものです。公民教科書全般にわたり、個人の尊重より家族の一体感・国家としての一体感・国家への帰属意識・国の名誉や存続を強調していることも際だった特徴です。
 改めて問います。何故、このような育鵬社教科書を同志社香里中学が採択することになったのでしょうか。
 貴校における「人権教育」は、「キリスト教主義」教育の具体的実践として行われているということが「本校の3つの柱」から見て取れます。貴校が人権感覚を欠いた教科書を採択するという出来事は、この「キリスト教主義」なる「柱」をも問われる出来事です。すなわち、貴校のキリスト教教育のみならず、キリスト教会が果たしてきた「宣教」をも問われています。
 日本基督教団は、1967年に「日本基督教団総会議長  鈴木正久」の名で「第二次大戦下における日本基督教団の責任についての告白」を常議員会で可決し、公表しました。がしかし、その後、真に「責任」を負いつつ現在に至っているかと言えば、必ずしもそうではありません。今や、日本基督教団は、曲がりなりにも「戦争責任」を告白し歩んできた敗戦後の歴史を否定し、社会と解離した「伝道」を推進しています。
 日本基督教団の教会は、戦中の「責任」だけでなく、敗戦後の「責任」と向かい合わなければなりません。
 自らの「宣教」を問い、悔い改めつつ、私たちは同志社香里中学の育鵬社教科書採択に強く抗議いたします。
 また、「何故」という問いに対する説明責任を要求いたします。下記、住所宛に、育鵬社教科書を採択するに至った経緯と理由説明を文書にし、送付してください。
 そしてその上で、貴校が速やかに同教科書採択を撤回するよう強く申し入れます。

2015年9月7日
呼びかけ人代表 日本基督教団いずみ教会牧師 安田和人
〒594-0023 大阪府和泉市伯太町1247-7

賛同人
【個人】
〇〇〇〇(肩書き)、・・・

【団体】
〇〇〇〇教会、〇〇教団〇〇教会役員会、〇〇委員会、〇〇センター、・・・
-------------------
(以下、参考として)

「クリスチャン・トゥデイ」より
同志社香里中学、育鵬社の歴史・公民教科書採択 キリスト教系では初
2015年9月3日16時34分

同志社香里中学(大阪府寝屋川市)は、2016年度以降に使用する歴史と公民の教科書として、それぞれ育鵬社発行の教科書を採択した。大阪府が8月28日発表した。「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)の元幹部らが執筆に加わっている育鵬社の教科書は、歴史に関する記述について議論もあり、一部の地域では採択やり直しを求める要請なども出ている。育鵬社によると、私立学校の16年度教科書採択状況はまだ全て出そろっていないが、キリスト教系の学校で同社の教科書採択が決まったのは、同志社香里中が初めてだという。
同志社香里中はこれまで、歴史と公民の教科書は帝国書院のものを使用してきた。16年度に、新たに育鵬社の教科書を使用する生徒は240人。滝英次教頭は 、「教科書採択の年(である今年)に、教科、また学校として、文科省の検定教科書の中から、いろんな議論を踏まえた上で慎重に選定した」と話している。
育鵬社の教科書『新しい日本の歴史』と『新しいみんなの公民』は、元つくる会のメンバーらによる日本教育再生機構が組織した「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」(教科書改善の会)の関係者らが執筆・監修している。育鵬社は、フジサンケイグループの出版社である扶桑社の教科書出版部門を独立させた出版社で、扶桑社時代を含め、中学校の歴史、公民の教科書が検定に合格し発行されるのは今回で4回目。一方、つくる会は自由社から独自に教科書を出している。
育鵬社の教科書については、日本国憲法が連合軍総司令 部(GHQ)に強要されたものだとする、いわゆる「押し付け憲法論」に沿った内容になっていることや、太平洋戦争の沖縄戦における住民の集団自決について、日本軍の強制性についての記述を避けているなど、さまざまな指摘がある。
一方、育鵬社の教科書の編集会議座長である伊藤隆・東京大学名誉教授(歴史)、川上和久・明治学院大学教授(公民)は、広報誌『育鵬社通信 虹』(2015年4月号)での共同メッセージで、「戦後70年の間には、教育の世界にも不毛なイデオロギーが持ち込まれた時期がありました。こうした一面的な物の見方を排し、生徒が真に学ぶ意欲を高め、多面的・多角的思考ができる人材となり、自らの郷土に貢献し、ひいては世界で活躍できるようになることを願い編集 しました」などと述べている。
Powered by Blogger.