2013年2月22日金曜日

[報告]「東ティモール日本軍占領期における『慰安婦』問題の早期解決を求める要請書」提出


2013年2月22日

東ティモール全国協議会
日本軍の東ティモール侵攻記念日(2月20日)にちなみ
岸田外相宛要請書(「慰安婦」問題の早期解決を望む)を提出

 東ティモール全国協議会は本日午後、参議院議員会館内にて、岸田文雄外務大臣にあてた「東ティモール日本軍占領期における『慰安婦』問題の早期解決を求める要請書」を、外務省南部アジア部南東アジア二課長に手渡しました。この要請書は、国内団体賛同44件、国内個人賛同367件、海外団体賛同14件、海外個人賛同25件の合計450団体・個人の賛同を添えて提出されました。昨年より少し増えました。
 賛同をお寄せ下さった団体・個人の方々には、心よりお礼申し上げます。
 さて、これまで毎年行ってきた「慰安婦」問題早期解決要請ですが、今年は以下の点が新しいポイントとしてありました。
 昨年の国連理事会で日本の人権状況に関する普遍的定期審査(UPR)が行われた際、7カ国政府が大戦中の「慰安婦」問題などの被害について言及し、東ティモール政府も日本政府に対し「残虐行為の被害者との直接的な、真の対話」に向けた努力をするよう呼びかけたという点です。(要請文本文にこのように書いています。)
 これまで、日本政府の態度は、東ティモール政府からこの問題をあげてこない限り、日本から対応することは考えていない、東ティモール政府には対インドネシアのことがあるからこの問題が言えないという事情がありそれを日本側も斟酌している、というものでした。
 (対インドネシアの考量というのは、東ティモール政府が日本政府に戦後賠償・被害者への補償を求めたりすると、国民からインドネシアに対しても先の紛争中の被害についてそれを求めよという世論が上がり、対インドネシア関係を悪くしてしまって政府は困るので、日本に対してもそれはいえないという事情のことです。)
 しかし、今回は東ティモール政府が人権理事会で上記のように述べたこともあり、東ティモール政府からそれなりの日本政府のアクションに対する期待があったと考えていいと思います。果たしてこの点に関して日本の外務省の見解は、要約すると以下のようなものでした。

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 東ティモール政府の発言は、一般的なことに触れたものであり、とくに東ティモールのことを述べているわけではない。被害への言及に一般的に触れたということが東ティモールのことを含むかどうかについては、解釈はしない。東ティモール政府は本気でこの問題を提起する気があるとは思えない。もしそうなら二国間でこの問題をあげてくるはずである。日本側が理解している限り、東ティモール政府はこの問題を提起する方針ではない。
 東ティモールにおける「慰安所」の実態については、かつて日本政府が全力をあげて資料を調査した際、東ティモールに慰安所があったというような言及は見つけたが、それが被害であったことを示す証拠は見つからなかった、と認識している。
 日本と東ティモール両国政府は「未来志向」で合意している。
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 外務省の見解の最初の段落については、「東ティモール政府は真剣にこれを提起しようとしていないという日本の見解を東ティモール政府に届けることになりますが」と言いましたが、返答はありませんでした。あくまで二国間で提起しない限り「本気」とはみなさないようです。
 東ティモール政府の発言が「一般的に言及したものだ」という見方については、同席したwamの渡辺さんから、東ティモール政府のこの発言部分には前後があって、そこでは東ティモールで過去の人権侵害の被害者(インドネシア時代)に政府が対応していることがふれられており、東ティモールという特定の国の事情を含ませたものと解釈すべきだとの指摘がありました。外務省の方からは、この文章についてはそこまで知識がないので今は判断できないという答えでした。
 2番目の段落については、この言い方は、安倍政権になって「強制の証拠はない」というロジックが復活していることを反映していると考えられます。今までの要請書提出の面会で、この点を言われたことはほとんどありません。実際、東ティモールでの強制の事実を示す記述が日本側公式資料になかったとしても不思議はないわけですが、それは資料の限定性(証言などは採用しない)や1990年代初頭の調査の状況(東ティモール現地調査はできない)を考えると、「全力でやった」と言われても、だから証拠はないと胸を張って言えるようなことではないことは、外務省も理解していたからでしょう。しかし、今回、この種のロジックをあえて出してきているということは、「強制の証拠はない」という主張を前面に出してくる政権のムードが背景にあるように思います。
 それに対して、こちらはwamの『東ティモール・戦争を生き抜いた女たち』(改訂版)を提示しました。この資料は見ているということでした。

 以上、今年の外務省側の態度は例年にもまして硬い感じがありました。やはり安部政権になって、外務省も緊張しているのかなと思いました。なかなか成果が得られない要請書の提出ではありますが、これからもまた続けていきたいと思います。また、今回の結果は東ティモールにも届けます。
 ご支援、ありがとうございました。

松野明久
東ティモール全国協議会

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